『白蓮れんれん』を読む
柳原白蓮、という女性を知っているだろうか。
簡単に説明すると、
明治大正昭和を生き抜いた華族出身の女性であり、福岡の炭坑王に嫁ぎ、
「美貌」の歌人として名をなし、絶頂期の大正10年、年下の帝大生と駆け落ち婚をして
当時の新聞雑誌を賑わせた人物である。
写真はこれ
↓ ↓ ↓

(福岡県立図書館HPより http://www.lib.pref.fukuoka.jp/works/2005/exhibits/byakuren/)
色白で上品な面立ち。かなりの美人である。
ちなみに駆け落ちをしてまで添い遂げた相手の宮崎龍介は、かの宮崎滔天の息子である。
そして林真理子がそれを小説にまとめたのが、この『白蓮れんれん』。
自慢ではないが林真理子の作品を1本も読んでいない私である。
これが林真理子モノを読んだ最初になるわけであるが、実は林真理子を読もうと
思って選んだわけではなく、私は明治、大正という時代に関心があり、
その時代に起きたという意味で、柳原白蓮という人の半生記みたいなものを読んでみたいと常々思っていたのである。でも、専門家が書いた伝記物は正確だが、専門的過ぎてつまらなかったりするのだ。なのでいつも、こういう女性の半生記は小説で読むことにしている。
話は戻って、柳原白蓮という人なのだが、歌人としての彼女の業績については、
歌のセンスゼロの私はぜんぜん分からない。
ただ、白蓮という女性が、人間としてどうなのか、生き方はどうなのか、
という点については、(当時も現代も)評価が分かれるであろうことは間違いない。
一つ分かることは、この柳原白蓮という女性の生き方に明治から大正にかけての
日本の時代精神みたいなものが濃厚に反映されているということである。
彼女の「魅力」は、京都の公家文化の「雅さ」に加え、当時東京の上流階級に「独占的」に流行していた西欧文化の香り、であろう。
「漆塗りの洗面桶」と「西洋風のティーセット」という彼女の嫁入り道具にそれは象徴されている。そして、彼女自身それをよく自覚しており、それ故に彼女にとって福岡の地およびそこで繰り広げられる人間関係はすべて「成金趣味的」で「唾棄すべき」ものとして見なされる。
後世の人間、特に私から見ると、この小説に描かれた伊藤家(白蓮の嫁ぎ先)の人間関係は、十分に興味深いものであるし、結果として白蓮に見捨てられる夫・伝右衛門もなかなか魅力的な人物に思える。というか、当時より少し前の日本の富裕階層では、こういう一夫多妻的大家族というのはそんなにめずらしいものではなかったのではないか。で、白蓮の時代というのは、そこに、まさに、西欧から「一夫一婦制」だの「ロマンチックな恋愛」だの、などが入ってき始めた訳である。つまり、こういう「新しい男女関係」のあり方が西欧のイケてる文化として、東京の上流階層の間ではやり始めた時期なのである。それは日本だけではなく、同時代の英国でも、恋愛結婚に憧れる女性たちは多く、いかにして実践に移すかで四苦八苦していたようである。
というわけで、そんなに嫌われることもないだろうに、と関係のない私などは気の毒になってしまうのだが、当時の「西欧化=イケてる」という価値観の下、西欧文明を集中的に浴びている東京以外に住む事なんて、それだけでハイソな女性にとっては「負け犬」的状況なのか。
そういう意味では、白蓮という女性は「ハイカラ」風味の女性だったのだろう。
無学な「成金」よりも、東京に住む「帝大生」に惹かれる、というシチュエーションもいかにも
大正風な女性の考え方ではないか。
そして相手になった宮崎龍介も、当時最先端だった西欧思想「社会主義」に夢中になっていた。西欧から持ち込まれる流行、新しい思想は、当時の若者たちをとりこにしたのだと思う。
今もそうだけれど、短期的な周期で流行が消費される現代と異なり、当時の若者たちは、それなりに真摯に受け止め、内面化し、実践していたのだろう。実際、白蓮と龍太郎は最後まで添い遂げ、長寿で天寿を全うしている。それは、白蓮にとってこの3度目の結婚相手が、前の夫たちに比べて相性の良い人物であったということだけではなく、「自分で選んだ相手と結婚する」事自体が、当時の日本では大事であり、それを成し遂げたという満足感にもあるような気がする。
明治から大正へのそういった時代背景が分からないと、彼女たちの生き様は
ありふれたソープドラマ「禁断の恋」版で片づけられてしまう。
というわけで、
柳原白蓮という人物の半生記を手っ取り早く知りたい、
という人にとってはオススメの本だと思う。
ただ、描かれ方が・・・なんというか、ソープオペラ風というか、
昼間の連ドラ脚本にそのままなれるような文体である(苦笑)。
「大正」という時代の精神はほとんど感じられず、白蓮と龍介という二人の関係は、
よくある「禁断の恋」というメロドラマ仕立てに矮小化されている。
ちょっと意地悪な言い方になるのだが、「愛のない結婚をしたセレブマダムと娘の家庭教師をしている一流大学生の恋」(笑)みたいにシチュエーションだけパクれば、時代を今に置き換えても変わらない。大正という時代は、レトロなインテリアのように舞台の雰囲気を盛り上げる大道具の役割としてちりばめられているだけである。
そういえば、菊池寛の『真珠夫人』(何年か前、昼の連ドラになってブレイクしたドラマの原作)は、この白蓮女史をモデルにしたものなのだそうである。
やっぱり、商業小説として売るためには、そういう書き方も必要なのか、
林真理子の作風なのか、林真理子読みではない私には分からない。
昼下がり風ラブシーンなど鬱陶しいわ!("`д´) という方には、
ちとしんどいかも知れない。
それにしても『白蓮れんれん』ってどういうタイトルのつけかたしているんだろうw。
「れんれん」っていう意味が分からない上、なんとなく語感になじめない私なのだ。
簡単に説明すると、
明治大正昭和を生き抜いた華族出身の女性であり、福岡の炭坑王に嫁ぎ、
「美貌」の歌人として名をなし、絶頂期の大正10年、年下の帝大生と駆け落ち婚をして
当時の新聞雑誌を賑わせた人物である。
写真はこれ
↓ ↓ ↓

(福岡県立図書館HPより http://www.lib.pref.fukuoka.jp/works/2005/exhibits/byakuren/)
色白で上品な面立ち。かなりの美人である。
ちなみに駆け落ちをしてまで添い遂げた相手の宮崎龍介は、かの宮崎滔天の息子である。
そして林真理子がそれを小説にまとめたのが、この『白蓮れんれん』。
自慢ではないが林真理子の作品を1本も読んでいない私である。
これが林真理子モノを読んだ最初になるわけであるが、実は林真理子を読もうと
思って選んだわけではなく、私は明治、大正という時代に関心があり、
その時代に起きたという意味で、柳原白蓮という人の半生記みたいなものを読んでみたいと常々思っていたのである。でも、専門家が書いた伝記物は正確だが、専門的過ぎてつまらなかったりするのだ。なのでいつも、こういう女性の半生記は小説で読むことにしている。
話は戻って、柳原白蓮という人なのだが、歌人としての彼女の業績については、
歌のセンスゼロの私はぜんぜん分からない。
ただ、白蓮という女性が、人間としてどうなのか、生き方はどうなのか、
という点については、(当時も現代も)評価が分かれるであろうことは間違いない。
一つ分かることは、この柳原白蓮という女性の生き方に明治から大正にかけての
日本の時代精神みたいなものが濃厚に反映されているということである。
彼女の「魅力」は、京都の公家文化の「雅さ」に加え、当時東京の上流階級に「独占的」に流行していた西欧文化の香り、であろう。
「漆塗りの洗面桶」と「西洋風のティーセット」という彼女の嫁入り道具にそれは象徴されている。そして、彼女自身それをよく自覚しており、それ故に彼女にとって福岡の地およびそこで繰り広げられる人間関係はすべて「成金趣味的」で「唾棄すべき」ものとして見なされる。
後世の人間、特に私から見ると、この小説に描かれた伊藤家(白蓮の嫁ぎ先)の人間関係は、十分に興味深いものであるし、結果として白蓮に見捨てられる夫・伝右衛門もなかなか魅力的な人物に思える。というか、当時より少し前の日本の富裕階層では、こういう一夫多妻的大家族というのはそんなにめずらしいものではなかったのではないか。で、白蓮の時代というのは、そこに、まさに、西欧から「一夫一婦制」だの「ロマンチックな恋愛」だの、などが入ってき始めた訳である。つまり、こういう「新しい男女関係」のあり方が西欧のイケてる文化として、東京の上流階層の間ではやり始めた時期なのである。それは日本だけではなく、同時代の英国でも、恋愛結婚に憧れる女性たちは多く、いかにして実践に移すかで四苦八苦していたようである。
というわけで、そんなに嫌われることもないだろうに、と関係のない私などは気の毒になってしまうのだが、当時の「西欧化=イケてる」という価値観の下、西欧文明を集中的に浴びている東京以外に住む事なんて、それだけでハイソな女性にとっては「負け犬」的状況なのか。
そういう意味では、白蓮という女性は「ハイカラ」風味の女性だったのだろう。
無学な「成金」よりも、東京に住む「帝大生」に惹かれる、というシチュエーションもいかにも
大正風な女性の考え方ではないか。
そして相手になった宮崎龍介も、当時最先端だった西欧思想「社会主義」に夢中になっていた。西欧から持ち込まれる流行、新しい思想は、当時の若者たちをとりこにしたのだと思う。
今もそうだけれど、短期的な周期で流行が消費される現代と異なり、当時の若者たちは、それなりに真摯に受け止め、内面化し、実践していたのだろう。実際、白蓮と龍太郎は最後まで添い遂げ、長寿で天寿を全うしている。それは、白蓮にとってこの3度目の結婚相手が、前の夫たちに比べて相性の良い人物であったということだけではなく、「自分で選んだ相手と結婚する」事自体が、当時の日本では大事であり、それを成し遂げたという満足感にもあるような気がする。
明治から大正へのそういった時代背景が分からないと、彼女たちの生き様は
ありふれたソープドラマ「禁断の恋」版で片づけられてしまう。
というわけで、
柳原白蓮という人物の半生記を手っ取り早く知りたい、
という人にとってはオススメの本だと思う。
ただ、描かれ方が・・・なんというか、ソープオペラ風というか、
昼間の連ドラ脚本にそのままなれるような文体である(苦笑)。
「大正」という時代の精神はほとんど感じられず、白蓮と龍介という二人の関係は、
よくある「禁断の恋」というメロドラマ仕立てに矮小化されている。
ちょっと意地悪な言い方になるのだが、「愛のない結婚をしたセレブマダムと娘の家庭教師をしている一流大学生の恋」(笑)みたいにシチュエーションだけパクれば、時代を今に置き換えても変わらない。大正という時代は、レトロなインテリアのように舞台の雰囲気を盛り上げる大道具の役割としてちりばめられているだけである。
そういえば、菊池寛の『真珠夫人』(何年か前、昼の連ドラになってブレイクしたドラマの原作)は、この白蓮女史をモデルにしたものなのだそうである。
やっぱり、商業小説として売るためには、そういう書き方も必要なのか、
林真理子の作風なのか、林真理子読みではない私には分からない。
昼下がり風ラブシーンなど鬱陶しいわ!("`д´) という方には、
ちとしんどいかも知れない。
それにしても『白蓮れんれん』ってどういうタイトルのつけかたしているんだろうw。
「れんれん」っていう意味が分からない上、なんとなく語感になじめない私なのだ。
by yamato1724 | 2005-12-20 22:09 | 趣味
段々いよいよ益々不定期更新になってきましたが頑張ります
by yamato1724
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