魍魎と陰陽師
京極夏彦氏の小説で、500万部を超えるベストセラーとなった『魍魎の匣』。
昨年末に映画化されて上映されていたのだが、出張で見逃してしまい、DVD化を待って、6月にようやく手に入れた。京極堂シリーズとしては第二弾。以前、第一弾のDVD版『姑獲鳥の夏』についても書いたことがあるので、こっちも書こうかなと思う。(『姑獲鳥の夏』についてのエントリは、こちら)。
京極夏彦の小説って、国語辞書か?って思うほど厚いのばかりなので、
どうやって映画化するんだろうって、いつも思う。前作の出来映えがかなりビミョーだったので、正直不安だった。前回ハマリ役だった永瀬正敏も病気で降板してしまい、昭和20年代の日本を中国・上海ロケで再現するとか、で、撮影中からオイオイ大丈夫かよ、って実は心配していたのである。
で、観た感想なのだが、
やっぱり
う〜ん....
という感じなのだ。
前作のときも、結構厳しいこと書いてしまったけれど、
これでは、前作の方がまだマシかも、って思える。
どう考えても、上海ロケには無理がある。
同時代の町並みを探したのだろうけれど、それはあくまでも1940年代後半の
上海の町並みであって、日本の町並みではあり得ない。
いくら、同じような木造の建物や、同じような田畑があっても、
そこに生活する人々の文化が異なると、街の醸し出す雰囲気、匂いなどが違ってくる。エキストラの動きも、そこここに違和感が感じられ、なんとなくハリウッド製映画の中に描かれる「日本」みたいな感じがする。
ストーリー展開も、原作とは随分異なっている。
京極作品の売りは、肩をわしづかみされて、「いいから聞け」って言われているような圧倒的な民俗学的な知識の披露と、人の性や関係性にまつわるおどろおどろしさ、にあると思うのだけれど、前者は映画で表現するのは難しいとして、後者まではしょられると、小説のおもしろさ自体が変質してしまう。Rナントカ指定にしてでも、そのおどろおどろしさは維持した方が京極ワールドを忠実に再現できて、おもしろさが増す、と思うのは私だけなのかなあ。アマゾンのレビューを読んだら、「原作とは違う作品として観た方が良い」っていう意見が多かったけど、それもなんだか悲しい気がする。
配役については、もう言わないでおこうと思ったのだが、永瀬正敏の降板はしょうがないとしても、それにしてもエラク体格の良い関口巽になってしまって、木場刑事よりもさらにデカいじゃないのよ。結論から言うと、結局、説得力のない、いろいろなパーツが気になって、世界に入り込めないのだ。よって結末もよく分からないままなのだけれど、原作を読まないで観た人の眼にはどう映ったのかなあ。
唐突ですが、陰陽師つながりということで、
これなら、野村萬斎の『陰陽師』の方が、断然オモロイと思う。
同じくアマゾンのレビューを読んだら、こちらも結構辛口のコメントが
多かったのだけれど、『魍魎』に比べると、迫力も説得力も断然違う。
平安時代の考証、これが正しいのか違っているのか、観ている方には分からないけれど、とにかく野村萬斎の立ち居振る舞い、狩衣の着こなしから長袴の裾捌きまで、
ものすごい説得力を持って観客を魅了する。アイドル系役者たちの棒読みのセリフも
いにしえの大宮人の言葉遣いに聞こえてくるし、京の都のはずが、実は岩手ロケ、とか、朱雀門は実は奈良ロケ、などということは全く気にならないのだ。
これがつまらない、というのなら、『魍魎』はどうなる。
ここまで書いて、ちょっと思ったのだけれど、
いっそのこと次回以降の京極堂シリーズ、
中善寺秋彦を野村萬斎、
榎木津礼二郎を伊藤英明、
でやってみたらどうだろう。
それで、最後のエンドロールは、野村萬斎の舞でしめる、と。
うん、観てみたいかも。
昨年末に映画化されて上映されていたのだが、出張で見逃してしまい、DVD化を待って、6月にようやく手に入れた。京極堂シリーズとしては第二弾。以前、第一弾のDVD版『姑獲鳥の夏』についても書いたことがあるので、こっちも書こうかなと思う。(『姑獲鳥の夏』についてのエントリは、こちら)。
京極夏彦の小説って、国語辞書か?って思うほど厚いのばかりなので、
どうやって映画化するんだろうって、いつも思う。前作の出来映えがかなりビミョーだったので、正直不安だった。前回ハマリ役だった永瀬正敏も病気で降板してしまい、昭和20年代の日本を中国・上海ロケで再現するとか、で、撮影中からオイオイ大丈夫かよ、って実は心配していたのである。
で、観た感想なのだが、
やっぱり
う〜ん....
という感じなのだ。
前作のときも、結構厳しいこと書いてしまったけれど、
これでは、前作の方がまだマシかも、って思える。
どう考えても、上海ロケには無理がある。
同時代の町並みを探したのだろうけれど、それはあくまでも1940年代後半の
上海の町並みであって、日本の町並みではあり得ない。
いくら、同じような木造の建物や、同じような田畑があっても、
そこに生活する人々の文化が異なると、街の醸し出す雰囲気、匂いなどが違ってくる。エキストラの動きも、そこここに違和感が感じられ、なんとなくハリウッド製映画の中に描かれる「日本」みたいな感じがする。
ストーリー展開も、原作とは随分異なっている。
京極作品の売りは、肩をわしづかみされて、「いいから聞け」って言われているような圧倒的な民俗学的な知識の披露と、人の性や関係性にまつわるおどろおどろしさ、にあると思うのだけれど、前者は映画で表現するのは難しいとして、後者まではしょられると、小説のおもしろさ自体が変質してしまう。Rナントカ指定にしてでも、そのおどろおどろしさは維持した方が京極ワールドを忠実に再現できて、おもしろさが増す、と思うのは私だけなのかなあ。アマゾンのレビューを読んだら、「原作とは違う作品として観た方が良い」っていう意見が多かったけど、それもなんだか悲しい気がする。
配役については、もう言わないでおこうと思ったのだが、永瀬正敏の降板はしょうがないとしても、それにしてもエラク体格の良い関口巽になってしまって、木場刑事よりもさらにデカいじゃないのよ。結論から言うと、結局、説得力のない、いろいろなパーツが気になって、世界に入り込めないのだ。よって結末もよく分からないままなのだけれど、原作を読まないで観た人の眼にはどう映ったのかなあ。
唐突ですが、陰陽師つながりということで、
これなら、野村萬斎の『陰陽師』の方が、断然オモロイと思う。
同じくアマゾンのレビューを読んだら、こちらも結構辛口のコメントが
多かったのだけれど、『魍魎』に比べると、迫力も説得力も断然違う。
平安時代の考証、これが正しいのか違っているのか、観ている方には分からないけれど、とにかく野村萬斎の立ち居振る舞い、狩衣の着こなしから長袴の裾捌きまで、
ものすごい説得力を持って観客を魅了する。アイドル系役者たちの棒読みのセリフも
いにしえの大宮人の言葉遣いに聞こえてくるし、京の都のはずが、実は岩手ロケ、とか、朱雀門は実は奈良ロケ、などということは全く気にならないのだ。
これがつまらない、というのなら、『魍魎』はどうなる。
ここまで書いて、ちょっと思ったのだけれど、
いっそのこと次回以降の京極堂シリーズ、
中善寺秋彦を野村萬斎、
榎木津礼二郎を伊藤英明、
でやってみたらどうだろう。
それで、最後のエンドロールは、野村萬斎の舞でしめる、と。
うん、観てみたいかも。
by yamato1724
| 2008-07-30 13:47
| 趣味
段々いよいよ益々不定期更新になってきましたが頑張ります
by yamato1724
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